叱るについて④ 叱る以外の方法論「後さばき編」

心理士パパの子育て、教育、対人支援もろもろ雑記帳

こんにちは。叱るについての連続記事の第四弾です。

前回は叱る以外の学びや成長の促進の方法論として、行動の前に行う「前さばき」について書きました。今回は本題の「叱る」が含まれる「後さばき」についてか書かせて頂きます。

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「後さばき」は次の行動への前さばきに繋がる

まず、もう一度「後さばき」とは何かについて触れておきます。後さばきとは、大人側の視点で見た時に減らしたかったり増やしたかったりする行動が起きた後にする、子どもへの対応のことを指します。もう少し厳密に言うと、子どもの行動が起きた「直後」に行う対応のことです。早ければ数秒から、どれだけ長く見たとしても数分以内にどうするかということが大切になります。

後さばきがなぜ重要なのかというと、それはその子の「その後の行動」に大きな影響を与えるからです。つまり後さばきは、次の子どもの行動への「前さばき」の一番最初の部分であるとも言えるかと思います。先程、「直後」であることが大事とお伝えしたのは、行動の直後に起きたことが次の行動に大きな影響力を持つためです。

後さばきの具体的な方法には、「褒める」「叱る」「見てみぬふり」「驚く」「喜ぶ」「ハイタッチ」などなど色々な対応があり得るかと思います。今回はそれらをどうやったらいいのかというような個別的な話ではなく、もう少し根本的な後さばきのメカニズムの理解と整理をお話ししたいと思います。

快と不快のメカニズム

後さばきが次の行動に影響を与えるメカニズムは至ってシンプルです。行動の結果、「快」の感情を感じたらその行動をもっとするようになるし、「不快」な感情を感じたらその行動を避けるようになる。言ってしまえば当たり前のことですが、後さばきのメカニズムの基本はこの関係性だと思ってもらって大丈夫かと思います。

「それはそうかもしれないが、人間の行動がそんなシンプルな関係性だけで説明できるはずがない」こんなふうに思われる方もおられるかもしれません。確かに、私達が日々考えながら行っている行動がそんなシンプルな仕組みに支配されているとはなかなか思えませんよね。そして事実、このメカニズムだけでは説明しきれない部分もたくさんあるかと思います。

ですがそうだとしても、このシンプルなメカニズムが人の行動にとても大きな影響を与えてえる事実は否定できるものではありません。それはきっと人間の生物としての本能のような学習メカニズムなのだと思います。

想像してみてください。どこかで天敵に狙われて命からがら逃げ延びたり、食べたものが腐っていて腹痛を起こしたら、次からその行動は避けなければいけまけん。逆に、お腹いっぱい食べられたり、暖かい寝床を見つけたりした時はその行動を繰り返すことで生存確率が上がります。私達生物はこういうメカニズムの学習を繰り返すことで世代を超えて生存してきました。

そしてそのメカニズムは現代社会を生きる私達にも当てはまるわけです。

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方法論よりも結果としての「情動体験」が大切

さて、話を「叱る」に戻しましょう。

連載初回にもお伝えしたように、この連載では叱るを「相手にネガティブな感情体験を与えてコントロールしようとすること」と定義しています。もうおわかりですね。後さばきのうち「不快」を与える方法論ということになります。

この場合の最も代表的な不快感情は「恐怖」と「苦痛(痛み)」です。この2つの不快感情は強烈な力を持っていて、多くの場合それを強く感じたら人はなんとかしてそこから逃れようとします。そして大事なのは、結果として子どもが恐怖や苦痛を感じたかどうかであり、大人の側がどう振る舞うのかは問題ではないということです。

つまり表面上にこやかで、冷静な言動であったとしても相手に恐怖か苦痛を与えることで変えようとするなら、それは不快感情メカニズムの使用ということになります。私が「怒ると叱るには大差がない」と言うのはこのためです。

そしてこのことは、褒めるについても同じことが言えます。褒めることが大切なのではないのです。相手が快感情を感じているかどうかが大切で、それはもしかしたら褒める以外の方法のほうが効果的な場合だってあるわけです。

こちらがしてほしいと思う行動をしてくれた時が勝負の時です。その直後になんとかして快感情を感じてもらえるようにしなくては、その人の行動は変化しないわけです。ここは結構見逃されがちで、よほどの素晴らしい行動をした時しか褒めたり認めたりするような関わりをしないということは、とてもよく起こる落とし穴かと思います。

もう少し要求水準を下げることで、快感情を感じてもらおうとする対象の行動はずいぶん増えるかと思います。

異なる神経回路

ここで少し違う角度から、この快と不快の話をしたいと思います。実は、脳の働きで考えるとポジティブな感情体験とネガティブな感情体験で、脳内には大きく異なる神経回路が存在しています。

これは当たり前のようで当たり前ではありません。感情という人の心の働きを司る一つの脳の部位や回路が存在するのではなく、それぞれ独立した複数の回路によって起こっているということなわけです。つまり、恐怖や苦痛といっった不快感情で行動を変える場合と、喜びや充足といった快感情で行動を変える場合とでは「脳の神経の生理的なレベル」で人は全く異なる体験をしているということになります。

それはつまり、不快が取り除かれるだけでは不快を感じるメカニズムが止まるだけで、快感情による学習メカニズムは働かないということを意味しています。

叱る依存の予防、または脱出を考えるなら、この快感情による行動変化(学習)のメカニズムについてよく知る必要があるわけです。

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快感情による行動メカニズム

ここからは快感情による行動変化についてポイントをお伝えしたいと思います。

まず最初に大事なのは、何が快感情を生み出すのかという快感情の源や、快感情の感じ方は人によってかなり違うということです。もう少し正確に言うと、脳や神経の特性にかなり大きな影響を受けます。このことを正しく理解していないと「いくら褒めても効果がない」とか「喜ぶと思ってしたのに不機嫌になられた」なんてことになってしまいます。

例えばASD(自閉症スペクトラム)の人は、神経学的多数派の人たちに比べて「社会的報酬」と呼ばれるものにあまり反応しないタイプであることが知られています。社会的報酬とは、簡単に言うと人間から直接与えられる報酬(この場合無形のもの)のことで「褒める」が代表的です。特に幼少期はこの傾向が顕著かと思います。(大人になるとそれまでの「学習」の結果として社会的報酬を強く求める人もいますので、あくまで全体としての傾向のお話です。)

いずれにせよ、その人が何によろこびを感じ、どんなことに充足感を覚えるのか。快感情による学習を促進したいならそこをしっかりと正しく理解する必要があります。

もう一つ知っていてほしいのは、快感情のメカニズムは「予想と結果の落差」によって働くということです。

快感情を感じる神経回路は、最初は快感情を感じられる体験をしたその時に強く働くのですが、その後だんだんと体験そのものではなく、快感情を感じられそうだという「予感」に対して強く働くようになります。そしてその予想が予想通りかそれ以下だった場合は、あまりもう強く働きません。ただ、結果が予想以上だった場合、再び強く働くようになります。

具体例で言うと、最初は好物を食べた時に働いていたのが、だんだんメニュー表を見る時に快感情を感じるようになるという感じですね。そして予想以上に美味しかったら、とても満足を感じますよね。

こういったメカニズムを考慮に入れて快感情による行動変化を目指すなら、後さばきとしての単純な褒めやご褒美の提示だけでなく、次の行動の前さばきとして子どもが何かワクワクできたり、期待できるような働きかけをしてあげることが効果的な関わりとなりやすいということになろうかと思います。

そしてその後の後さばきで、子どもたちの予想以上の嬉しい出来事がおこるような状態を作り上げることが出来れば理想的かと思います。

毎回ですがこのテーマを書く長くなってしまいます。叱る依存についてはもう少し書きたいことがありますが、それはまた次回にしたいと思います。

今回はこのへんで!

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