カサンドラ症候群について④カサンドラの向こう側

発達障害よもやま雑記帳

カサンドラ症候群に関する連続記事の4つ目です。

今回はあまり語られることの少ない、自閉スペクトラム者側から見たカサンドラについて私の思うところを書かせて頂きたいと思います。

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困惑の感情世界

もう一度前提を書かせて頂きますが、私はカサンドラ問題を「互いに必要としあっているのに、すれ違い傷つけ合う二人」という文脈で捉えています。(詳しくは過去記事をご参照ください)

つまり当然といえば当然ですが、自閉スペクトラム者側にも苦しみがあるわけです。ただ、問題の捉え方や感じ方は異なっています。私が重要だと思うのは「困惑」の感覚だと思います。

つまり「一体何が起きているのかがわからない」という感覚です。

なぜパートナーがこんなに悲しんでいるのか、なぜこんなに怒っているのか、本当に理解できない。訳がわからない。

そして問題を解決しようと、自分なりの感覚や考えを伝えれば伝えるほど、なぜだか問題が深刻化していく。そんな感覚です。

なぜそんなことが起こるのか?

それは何に自然に注目し、何を大切にしたいのかという価値観レベルのものの捉え方や、心地よいと思う人との距離感や関わり方など、対人関係のベースとなる基本構造の違いにより起こるのだと思います。そして私はこれを脳や神経由来の文化の違いと呼んでいます。

もちろん違っていること自体はどんなパートナーシップでも当然あることです。ですが自閉スペクトラム者といわゆる定型発達者に横たわる違いは、あまりにも大きい。

そして当人たちに自身にとっては当たり前の感覚過ぎて、根本的な違いがあるということに気づくことすら難しいものです。そしてその問題がさらに深刻化する要因が家族や家庭という空間にあります。

家族という名のブラックボックス

カサンドラ問題の主たる現場は夫婦関係、つまり家族関係です。これはこの言葉が生まれてきた歴史的背景からもそう言えます。

そして考えてみれば、家族や家庭と呼ばれる人間関係はとても特殊な側面があります。

多くの場合、家族はそこにともに「いる」ことが大切であり、何かを「する」ことが目的ではありません。

「いる」と「する」は図と地の関係にありどちからが表になるとどちからが裏に回り、互いを支え合います。家族のように、「いる」が恒常的にメインで、それを支えるために「する」がある。こんな対人関係は他にはなかなかないのです。

そしてとても重要なこと。私たちが社会性やコミュケーションとして他者との関係性構築を学ぶのは「する」がメインの関係性であることが圧倒的に多いのです。つまり「いる」がメインの関係性の構築の仕方を学ぶ機会は人生で乏しい。子どもとして関わる家族との人間関係は、良くも悪くも気がついたらそこにある関係性であり、主体的、能動的に関係性を構築したわけではないですからね。

だからそこはその人の一番素の、ありのままの姿が現れてきます。あるいはせめて自分の家庭でくらい、自分の素の姿で居たいと願う部分もあるでしょう。

だからこそ、脳や神経由来の文化の違いが浮き彫りになり、問題がより深刻化しやすいのだと思います。


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「あたりまえ」のせめぎ合い

その意味で家族という関係性はお互いにとっての「あたりまえ」が激しくぶつかりやすい空間です。

自閉スペクトラム者側の感覚で言うならば、やっとパートナーを得て新しい家族になれた。自分の素の姿でいれる場所が作れたと思っていたら、なぜかいつのまにか激しくパートナーが怒っていたり悲しんでいたりするわけです。これが冒頭に書いた「困惑」が生まれる構造だと思います。

そして、多数派に属するいわゆる定型発達タイプのパートナー視点で見ると、自分にとって至極当然だと思っていることが相手に通じない場合、人はやっぱりその相手が「間違っている」「おかしい」と感じやすいものだと思います。周囲の人たちに確認しても、だいたい同じような感覚や捉え方がリアクションとして返ってきますので、よりそう感じることになるでしょう。

自閉スペクトラム者が多数派の人から投げかけられやすい言葉があります。それは「あなたは人としておかしい」という言葉です。

多数派の人からすると、それくらい傷ついて信じられないという意図の表現ですが、自閉スペクトラム者にとってはとても辛い言葉だと思います。

ここを乗り越えるためには、一度双方にとっての「あたりまえ」を自覚し、その向こう側にあるパートナーにとっての「あたりまえ」を理解しようとしなくてはいけないのだと思います。

相手のあたりまえに共感や同意は出来なくてもいいのです。感覚としては絶対に共有できない部分は必ずあります。でも、ただ「そういうことなのか」と理解をしているだけでもかなり違ってくるかと思っています。

また長くなってしまいました。このテーマ、書き始めると自分でも予想外に長編になってしまいました。まだ書きたいこともありますがとりあえず今回はこの辺で。

つづきはこちら

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