ASD(自閉症スペクトラム)者と「想像力」① 言葉の乱用と混乱の整理

発達障害よもやま雑記帳

こんにちは。

今回はASD(自閉症スペクトラム)者と想像力というキーワードについて私なりの整理を書きたいと思います。自閉症スペクトラムの一つの特徴として「想像力の欠如」であったり「想像力の困難」ということが今でも言われることがありますが、 この言葉少し雑に使われてしまっていることが多く、誤解を生んでしまっていることが多いように思うのです。

その意味で前回書いた「言葉の定義大切さ」の記事と関連していますが、今回は連番記事ではなく新しい記事として書きたいと思います。

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ASDと「想像力」を結びつけたのは誰?

ASDと「想像力」を結び付けた人物としては、ローナ・ウィング博士が有名です。彼女はかのアスペルガー症候群を世に知らしめたことで有名な方で、自閉症スペクトラムの特徴として「社会的相互作用 (patterns of social interaction) 」「コミュニケーション( social communication)」「 想像力 (social imagination) 」の3つの困難を紹介しました。いわゆるウィングの3つ組特性と呼ばれるものです。

現在でも使われることの多い「自閉症の人は想像力に困難がある」という言説の起源はこの3つ組の説明が起源となっていると考えてまあ間違いないかと思います。ところがこのウィング博士が言った「想像力」と現在よく使われているASD者の「想像力」という言葉には、同じ言葉でも相当な意味の違いが生まれてしまっている場合があるように私には思えます。

ウィング博士はこの想像力という言葉をASD者の「こだわり」や「反復行動」の背景要因として考えていました。先々に起こることの想像ができないため、自分なりの見通しを持つことが困難になり、自分なりの見通しにこだわったり、同じことを繰り返すことで安心感を得ているのだと考えたのです。つまり、ウィング博士は基本的に「時間的な将来の予想、見通しの困難」という意味で「想像力」という言葉を使っていたということになります。どこまでこの想像力という言葉を限定的に考えていたのかは私には分かりませんが、少なくともいわゆる一般的な意味で言われる「想像力全般」に困難があるとは考えていなかったはずです。

しかしながら現在この「想像力」という言葉が独り歩きし、ASD者はありとあらゆることを「想像することが出来ない」人たちだという文脈で使われてしまっていることが起こってしまっているように思います。これは非常に誤解を生む説明だと思います。

現在の診断基準に想像力という言葉は使われていない

実は現在世界的に広く使われている自閉症スペクトラムの診断基準の中に、想像力という言葉は使われていません。つまり医学的には想像力の困難は自閉症スペクトラムの特徴として明確には規定されていないということになります。それはウィング博士の考えが否定されたと言うことではなく、この想像力という言葉が多義的で対象となる範囲が非常に広く扱いにくい言葉であったことが一つの要因であったのではないかと私は思っています。

つまり「想像力」という言葉がカバーする範囲の中に、ASD者が苦手とする場合が多い部分とそうではない部分が混ざってしまっており、そこを明確に定義することが困難だということです。そのため、ASD者の特性として「想像力」という言葉を使う場合、「何を想像することの困難」として言っているのかを明確にすることが必要だということになります。そうしないとASD者によくある特性の話なのか、ASDとはあまり関連しないその人個人の特徴なのかがごちゃごちゃになってしまって、ほとんど意味のない話になってしまいます。

これらのことから私個人的には、ASD者について話をする時に「想像力」という言葉はあまり使わないほうがよいと思っています。想像力という言葉はちょっと「大きすぎる言葉」なので、もっと具体的にかみ砕いて話をするほうが有益だと思うからです。

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「想像力」を分解しよう!

もっと具体的に噛み砕いてと言っておいて、じゃあどういうこと?というのに答えないのは無責任のように思えるので、私なりの考えを書いておきたいと思います。ただ、ここについては定説があるわけでもなく、あくまで私の仮の整理であることはご了承ください。

色々な考え方があるとは思いますが、想像力という言葉がカバーする範囲で少なくともこれくらいには分解できるのではないかと思います。

  • ある場面における次の展開を予想すること
  • 他者の感情や思考を推測すること
  • 自分の言動が他者に与える影響やその結果を推測すること
  • 架空の想定の中の人物の心情を推測すること
  • 文字や聞いた言葉から視覚的なイメージを想起すること
  • 物理的、化学的な法則性に則った因果関係を予想すること
  • 新しいアイデアを思いつくこと

などなど、言い出すときりがないですね。まだまだ分解出来そうですがこれくらいにしておきたいと思います。

実はこの想像力の具体的な分解のうち、ASD者が苦手とすることが多いものと、そうではないものが混ざっています。みなさまその違いがお分かりになりますでしょうか?

これらは全部、想像力という言葉でカバーできてしまう内容ではあるかと思うので、「想像力の困難」と言ってしまうとこれら全部が苦手であるというような誤解が生まれてしまうわけです。それは非常によくないですよね。

もっとさらに言うと、今言っているのはあくまで全体の傾向の話です。個人レベルで言うと、これらの得手不得手はASD者の中でもかなり濃淡があるかと思います。

ですので、個人レベルで特性を理解しようと思うと、先にあげたようなポイント一つ一つについて「その人の得手不得手」を理解する必要があるかと思います。自閉症スペクトラムと診断されてるから想像力がないはず、などという雑な理解は論外ということになります。

長くなりましたので、今回はこの辺で!このテーマ次回は想像力の中でもASD者が苦手とすることの多い部分とそうではない部分の違いについて書けたらなあと思います。

気になる方はこの記事を拡散して頂けますと、非常に書くモチベーションが上がりますので、よろしくお願いします!笑

つづきはこちら

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