「マーブルゾーン」という表現について

発達障害よもやま雑記帳

こんにちは。

以前よりSNS上や講演などで「グレーゾーン」という言葉の置き換え表現として「マーブルゾーン」という言葉をご紹介しています。

発達障害について説明するための用語としてはグレーゾーンよりもマーブルゾーンのほうが実態に近いのではないかと思っているからです。ですが今まできちんと文章としてまとめて書いてはいなかったので、今回はマーブルゾーンという言葉について書かせていただきます。

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グレーゾーンについて

発達障害について語られる時に非常によく使われる、グレーゾーンという言葉、実は正式な定義が存在する学術的な専門用語ではありません。詳しい起源については私も存じ上げませんが、元々は知的能力の発達について「知的障害と言えるほどではないが何らかの遅れがある」という状態を指す言葉として医療や福祉、教育などの支援現場で広まった言葉かと思います。

それがいつしか、知的能力の遅れが伴わない、もしくは平均以上の知的能力がある場合においても、何らかの「発達障害特性」が見られる場合に使われるようになりました。

つまり、グレーという言葉が修飾する対象が前者の「知的能力」から、後者の「自閉症スペクトラム(ASD)やADHDの特性や症状」へと広がっていったということになります。

そしてさらに言うと、私の知る限りでは現状でグレーゾーンという言葉は2通りの使われ方がされているように思います。

1つ目の使われ方は、医学上の診断基準を意識した使われ方です。この場合グレーゾーン当言葉は「診断基準未満」や「未診断の」という意味に非常に近い使われ方がされることになります。つまり、診断基準を満たすほどではないが一定の特性を有しているという場合や、診断基準を満たしているかもしれないが現状ではまだ未診断状態であるとう場合に使われるわけです。

もう1つの使われ方は、発達障害と呼ばれている特性をスペクトラムとして捉えた場合の「中間地帯」というような意味合いで使われる場合です。この場合は、診断基準を満たすかどうかはあまり重要ではなく、典型例と比べて特性をどの程度持っているのかということが重視されます。

もちろんこれら2つは重なり合う部分も多く明確に切り分けきれるものではありませんが、現場での使われ方として一応区別して、どちらのニュアンスで使用しているのかを把握しておくことが有益なのではないかと私は思っています。

グレーゾーンでは伝えきれないこと

ここからは、私がなぜ「グレーゾーン」よりも「マーブルゾーン」が言葉として実態に近いと考えているのかについてご説明していきますね。

まず、グレーゾーンという言葉の持つ語感やイメージを図で表現するとこんな感じかと思います。(今回のイラストはすべてイラストレーターのたきれいさんに作成して頂きました。たきれいさん、ありがとうございます!)

ご覧のようにグレーゾーンという言葉が持つ語感やイメージは、黒と白が均一に混ざりあう中での中間地帯に存在する「灰色」の部分という感じかと思います。そして残念ながら多くの人が「白=障害のない」「黒=知的障害、もしくは発達障害」というふうにも読み取られるのではないかとも思います。

つまり、「明確に障害のない」から「明確に障害がある」までが人類全体で見ると連続しており、それらは均一に徐々に混ざり合っている、ということを前提とした表現となっていると思うのです。こういった連続性のことを発達障害の領域では「スペクトラム」という言葉で表現します。特に自閉症については、「自閉症”スペクトラム”障害」と正式な診断名称にまで使われるほど重要視されている概念です。

そして私がマーブルゾーンという言葉を考えた最初のきっかけは、このスペクトラムという言葉が必ずしも「徐々に変化して連続している様」だけを表す言葉ではないということを知ったことでした。通常、スペクトラムという言葉を説明するときは虹を例に出して、連続して徐々に変化し境界線が曖昧な状態というような意味合いで説明することが多いかと思います。

もちろんこの説明自体は誤りではありません。ですが、スペクトラムという言葉は、「一見不連続に見えるものでも1つのカテゴリーに含まれる」という状態ついても使う言葉だそうです。そしてそのことを知ったときに、その部分も含めて発達障害と呼ばれている現象は「スペクトラム」な現象だなあと私は思ったのです。

自閉スペクトラムやADHDなどの発達障害特性の中間地帯にいる方って、必ずしも特性をマイルドに均一に持っておられるわけではなくて、特異的にある部分においてはっきりとした特性があったり、またある部分ではほぼ特性がみられなかったりすることのほうが寧ろ多いと思うのです。その意味でグレーゾーンという言葉では、こういった現象を説明しきれないなと感じました。

またもう一つの視点で、白と黒って「白黒はっきりする」なんて言葉があるくらいなので、どうしても「優劣」連想させる言葉かと思います。私は発達障害について、脳や神経由来の異文化相互理解や異文化共存という視点で捉え理解しようとする立場(ニューロダイバーシティ)を取る心理士(師)です。文化間には優劣が存在しないことが前提と考えていますので、その視点で見てもグレーという言葉は少し残念な気がしました。

マーブルゾーンという言葉をSNS等で発信している時に、パステルゾーンという言葉を提唱しておられる方がいらっしゃるという話も教えていただきました。詳しくは存じ上げないのですが、きっと私の言う優劣の概念に対するアンチテーゼとして言われているのかなと感じとても共感いたします。

この図のように、パステルゾーンだと優劣のイメージはほぼなくなりますよね。

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マーブルゾーンで表現したいこと

これらのことを考えた時に、グレーゾーンに代替できるより実態に近い表現はないかと思案した結果がこの「マーブルゾーン」という言葉です。

マーブルという言葉の語源は「大理石の模様」です。たとえば水面に絵の具を垂らした時にそこに描き出される模様をイメージしていただくとよいもしれません。

そこから考えられるマーブルゾーンという言葉のイメージ図は以下のようになります。

伝わりますでしょうか?

ここで表現したいことは、必ずしも均一に混ざり合って連続したグラテーションではないが、全体としてスペクトラムである、そしてそこに優劣が存在していないということです。

それらの条件を満たす表現として「マーブルゾーン」という言葉は、なかなか良いのではないかとちょっと自画自賛ながら思っております。そしてさらに、マーブルの場合、いわゆる定型発達と自閉スペクトラムというような2要素だけでなく、神経学的多数派と自閉スペクトラムとADHDというような3要素以上が含まれるような場合の「中間地帯」を表す表現としても使用できるようにも思います。

しかしながら、そもそもグレーゾーンだろうがマーブルゾーンだろうが、正式な用語でもないそんな言葉は必要ない、と考えられる方もおられるかもしれません。しかしながら、自閉症スペクトラムを代表に発達障害がスペクトラムな現象であるということは広く認められている知見であり、スペクトラムである限り必ず「中間地帯」におられる方が存在するということになります。そしてその方たちご自身や、その方たちにとっての「生きにくさ」を表現するための言葉もまた必要なのではないかと私は考えています。

長くなってしまいましたが、ここまでの私の説明を読んでマーブルゾーンという言葉にご納得頂き「いいじゃないか」と思って頂けますようでしたら、ぜひグレーゾーンという言葉の代わりにマーブルゾーンを使って頂けますと嬉しく思います。(正式な医学用語でも行政用語でもないので、置き換わったとしても誰も困らないはずですし笑)

今日のところはこのへんで!

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今回のイラストをすべて無償で作成して頂きましたたきれいさんから、これらのイラストを啓発目的なら「著作権フリー」!で使用して良いとのご許可を頂いております。皆様バンバンご使用頂ければと思います。

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