自閉スペクトラム者とTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)

発達障害よもやま雑記帳

こんにちは。

昨日、自閉スペクトラム者とTRPGについて研究されておられる加藤浩平先生とお会いしてきました。先生は、大手学術出版社の金子書房さんの編集者でありながら、教育学の博士号を持つ研究者(東京学芸大学)でもあられるという、とっても素敵な異色の経歴の持ち主です。

お話する中で感じたことを忘れないうちに書いておきたくて、記事にしています。かなりマニアックなテーマですが、自閉スペクトラムを理解する上でとっても貴重で重要な視点だと思っています。

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そもそもTRPGってなに?

TRPGとは、テーブルトークロールプレイングゲームの略です。RPGと言えば「ドラクエ」とか「ファイナルファンタジー」などのテレビゲームが有名ですよね。TRPGは簡単に言えば、そういったロールプレイングゲームのアナログゲーム版のことです。紙とサイコロとペンを使って、ファンタジーの世界を会話形式で楽しむそんな遊びです。ゲームマスターと呼ばれるゲームの進行役がいて、その他の参加者はその世界の住民として役になりきってゲームに参加する形式をとられることが多いです。

詳しくは、困った時のwikipediaをご覧いただければと思いますが、世界中にファンがいて、いろいろな世界観を持ったゲームタイトルがたくさん作られています。

私個人はちょっとTPRGに憧れに近い強いコンプレックスを持っています笑。若かりし頃に「ロードス島戦記」というファンタージ―小説の大ファンになり(未だに全巻私の本棚に並んでいます)その小説をきっかけにTRPGの存在を知りました。

当時の私はもうTRPGをやりたくてやりたくて、TRPGに必要な特殊な道具(20面サイコロとかです)を無駄に購入したりしたのですが、結局仲間を見つけられず…
そんな経緯がありまして、知識はたっぷりあるのですが経験に乏しい村中です笑

自閉スペクトラム者とTRPG

加藤先生は自閉スペクトラムの若者たちがTRPGで遊ぶことによって起きる変化に関心を持たれ、それを博士論文にまでされたという稀有な方です。先生から教えて頂いた貴重なお話、私だけ一人占めするのが勿体なさすぎるのでシェアしますね。

加藤先生
加藤先生

最初は(編集者としての)取材の一環でボランティアとして、自閉スペクトラムの若者たちとTRPGで遊んでたんですよね。そしたらゲームするまでピョンピョン飛び跳ねてたり、人との関りを避けているように見えたりするようなかなり濃いめの自閉スペクトラムの若者たちが、ゲーム始めたとたんに全然違う表情でスムーズに会話し始めるんですよ。しかもそこらの中高生よりもよっぽどTPRGゲーム内での所作をよくわかって振る舞っている。これはなんだ?なにが起きてるんだ?と感じたところがスタートなんです。


この話、みなさんはどう感じられますでしょうか?不思議に思われますでしょうか?

私はこの話を「そりゃそうだろうなあ。」と思って聞きました。役割もルールも能力パラメーターも行動制約もすべてが「不明確」な現実世界よりはるかにTPRGの中での世界のほうが生きやすく、コミュニケーションがとりやすい世界だろうなあと私には思えたのです。

加藤先生
加藤先生

(TRPG好きの)自閉スペクトラム高校生にインタビューしたら、「TPRG中のほうが僕には選択肢が多いんです」って言うんですよね。実際には現実世界のほうが選択肢は無限にあるはずなんですけれど、それが彼らには可視化されていないのだと、その時思ったんです。

いや、ほんまそれ!って感じです。
環境側が「(決まりごとが)明確であること、明示的であること、論理的に整合がとれていること」が整うか整わないかで、まったく異なる状態になるというのは私も今までの実践経験の中で何度も経験してきたことです。

この辺は自閉スペクトラム者への支援や教育を考える上でもとても重要なヒントになるのではないかと個人的には思っています。

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コミュニケーションの障害ってなんだ?

精神医学的な定義で言うと、自閉症スペクトラムは「コミュニケーションや社会性の障害」と定義されています。しかしながら、(一般的な意味で言う)コミュニケーションというものは一人ではそもそも成立しません。他者の存在が前提であり、他者とのやりとりのことをコミュニケーションというわけです。そういう他者の存在や関係性が前提として必須であることに対して、どちらか一方だけの障害や問題として記述することには、やっぱりちょっとそもそも無理があるように私には思えます。

誤解がないように補足しておくと、現状で自閉スペクトラム者が「コミュニケーションや社会性と呼ばれる領域において生きにくさや困り感を抱えることが(少なくとも今はまだ)多い」ということを否定したい訳ではありません。ただそのことを自閉スペクトラム者の「内側にある障害」であるとすることには概念上の矛盾があるように思うということです。(ここでは知的な能力の障害がないか、軽度な場合を前提としてお話しています)

そして、その事実をありありと目に見えて指し示してくれるものとしてTRPGという手法が持っているポテンシャルはとても大きいなあと思うのです。

ただ注意して頂きたいのは、このことを「新たな療育手法が出てきた」とか「SSTの新手法の可能性」などとは考えて頂きたくないのです。加藤先生は首尾一貫してTRPG研究を「余暇支援」という位置づけで発信しておられます。私もその方向に賛同します。ただ、きっと同時にTRPGは自閉スペクトラムの若者たちにとって「学びや成長促進の場」となるだろうとも強く思っています。しかしながらそれは周囲が考える「正しい(コミュニケーションの)やり方を身につける」「望ましい社会性を学ぶ」なんてことを押し付けるようになったら、その場がすぐにおかしくなってしまい、何の効果も生み出さなくなってしまうと思うのです。

もっと突っ込んで言うと、TRPGは「自閉スペクトラム者にとってコミュニケーションしやすい(小さな)社会や環境の提供」という側面が強いと思うのです。その人に適した環境が提供され、それが楽しかったり豊かな経験が出来る場であれば、人は自然にそこからたくさんのことを学び取り、自らの意思で成長していくと思うのです。

以上、自閉スペクトラム者とTRPGに関する私見のまとめでした。

最後に宣伝!

私が事業責任者を務めます「発達障害サポーター’sスクール」で加藤先生とコラボしたTRPGに関するイベントか講座をそう遠くない将来に企画します!この領域に興味のある支援者のみなさま、楽しみにしておいてくださいね。

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