自宅でお子さんの「学び」と向き合う保護者の方へ

心理士パパの子育て、教育、対人支援もろもろ雑記帳

こんにちは。

私は、子どもたちの学びの支援を専門の1つとしている臨床心理士です。この記事を書いている今日現在(2020年4月5日)、都市部を中心に学校の休校延長が次々と決定されています。また学校が開くとしても、お子さんの健康と安全の為に自主休校を選択される保護者の方も少なからずおられるのではないかと思います。結果として学校に通っていない(通えない)子どもたちが全国的にたくさんおられるという状況が生まれることになっているかと思います。

しかしながら学校に通えないことで生じる、子どもたち「学びの保証」に関する問題はあまり議論されていないように私は感じています。自宅でお子さんと過ごしながら、子どもたちの学びについて不安や葛藤を抱えておられる保護者の方が全国にたくさんおられるのではないかと思い、私の今までの経験や学習支援の専門知見から少しでもお役に立てることが書けないかと筆をとっております。

ここからは、自宅で子どもたちの学びと向き合っておられる保護者の方へのメッセージを書きたいと思います。ご家庭の状況など一切分からない中で書きますので的外れな部分ももちろんあろうかと思いますが、ご容赦頂ければと思います。

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教える人にはならなくていい

まず一番最初にお伝えしたいことは、教える人つまり「教師役」や「先生役」を引き受ける必要はないということです。必要はないというよりも私個人の感覚としては「してはいけない」というほうが近いです。

教えるという行為がうまくいくためには、教える側のスキルと教わる側のスタンスの両方が揃っている必要があります。その両面から考えて保護者の方がその役割を担うことは不可能ではないですが非常に困難です。特に教わる側のスタンスについては、本当に難しいハードルが存在しています。教わる側のスタンスとはつまり教える人と教わる人という「関係性構築」の問題と言い変えることが出来ます。

これが本当に難しい。

簡単にいうとケンカになっちゃうんですよね。お互いにほんとうにイライラしてしまう。「なんでこんなにわからないの?」「全然ちゃんとしない!」「さっき言ったばっかりでしょ?」などなど。お子さんもなかなか素直に言うことが聞けない場合が多く反発してしまうことが多くなるでしょう。
つまり保護者の方とお子さんの関係性が悪化する要因にしかなならない場合が多い。これはほんとうに普遍的によく起きることで、誰でも陥る落とし穴だと思います。だから「学校に行けないのだから私が教えなくちゃ!」と感じておられる場合、まずはそれはしないほうがいいというふうに考えてもらえると幸いです。

もちろんうまくやれているご家庭も多くはないですがありますので、その場合は特に問題はないかと思います(というよりそれはとても素晴らしいことだと思います)。ですが今回のコロナウイルスの影響で急に家庭学習に切り替えざるを得なくなられたご家庭については避けて頂いたほうが良いかと思います。

「学ぶ」というテーマで話をしてみてほしい

では何をすればいいのか?

私がお勧めしたいのは、この機会にぜひ「学ぶ」ということ自体をテーマにお子さんとお話をして頂くことです。ここでのコツは「勉強」と言わずに「学ぶ」と表現することをお勧めします。特にお子さんが「勉強は嫌いだ!やりたくない!」と感じておられる場合はそのほうが良いかと思います。

学ぶという行為がなぜ大切なのか、それはだれかに言われて仕方なくしなくてはいけない行為ではないこと、学ぶということが与える影響などなど、保護者の方自身にも向き合っていただきお子さんとお話して頂きたいです。

ここからは少し「学ぶ」ということについてご説明したいと思います。私が講演会等に呼んで頂いた際によくお話しさせてもらうことの要約です。

詳しく読まれたい方は私の講演をこちらの記事にうまくまとめて頂いております。

https://children.publishers.fm/article/21684/

学ぶということを考えた時にとても大事なことは「学ぶ」という行為が子どもたち、若者たちに特化したテーマではもうすでになくなっているということです。これからの時代を生きる子どもたちは「生涯学び続ける」ことが今まで以上に求められている世代です。これは、学ぶことでよりよく生きることが出来るという水準の話ではなく、学ばないと最低限の生活が脅かされるという意味で学び続けることが求められる時代となっていくと予想されるのです。

それはなぜか?

今回のコロナウイルスでの社会の急激な変化でも実感できるように、社会や環境の変化はどんどん早く、大きくなっていきます。変化が大きな時代とは、「何を学んでおけばよいか」の予測が難しい時代です。変化の激しい環境では、知識や技能はすぐに古くなり役に立たなくなってしまいます。つねに学び続けて自分の知識や技能をアップデートしなくては、うまくやっていけない、誤った判断をしてしまったり、最悪の場合命の危険すら起こりうることになってしまいます。

これは言い方を変えると「過去に身につけた知識や技能」の価値が相対的に低くなり、状況や環境の変化に合わせて「学ぶことが出来る」こと、つまり「自分にあった学び方が身についているか」や、「学ぶことへの意欲や習慣を有しているか」など「学び方を学ぶ」ことが出来てきたかが大切になっていくということなのだと思います。

本当に大変で苦しい社会状況ではありますが、学校がお休みで子どもたちの「やらなくてはいけないこと」が少なくなる今こそ、本質的な意味で保護者と子どもが「学ぶ」というテーマで話し合えるとても貴重な機会であると前向きに捉えることも出来るのではないかと思っています。

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コロナウイルスをテーマに「学び方を学ぶ」

その意味で、今回の新型コロナウイルスは保護者と子どもで取り組む「学びのテーマ」としてとてもマッチしているかと思います。今回のウイルスは今までの感染症とは異なっている部分やまだまだ不明な部分も多く、日々様々な情報が飛び交っている状態です。その中でどの情報から「何を学び」、どう日々の行動に反映させるのか、ぜひご家庭で調べて考え、その中で「学ぶ」というテーマで話し合って頂きたいと思います。

おすすめの方法は、インターネットでの検索キーワードを変えて情報検索をすることです。例えば、一般的に報道で使われる「新型コロナウイルス」、病気の正式名称「COVID-19」、原因ウイルスの正式名称「SARS-CoV-2」の3つで調べるのです。たったそれだけのことで手に入る情報のタイプや性質が大きく変わってくることを実感することが出来るかと思います。

そしてその中で何か1つでも子どもたちが興味を持つテーマが見つかったら、ぜひお子さんと一緒に探索的に深堀りして学んで頂きたいです。もしかしたら各国の医療体制や人々の行動の違い(文化)に興味を持つかもしれません。薬がどのように作られているのか製薬の仕組みに興味を持つかもしれません。社会保障や政治の仕組みについて興味を持つかもしれません。

大切なことは「学ぶ」ということは本来とても楽しいことだということです。知らないことを知ったり、分からないことが分かったりすることの楽しさや面白さが実感できる体験が豊かにあるといいなあと願っています。

そうすると、得た情報を正確に理解するためには、生物や語学、統計、地理、政治など前提として様々な知識を持っていないといけないことも実感出来るかと思います。子どもの時に基本的な知識を身に着けようとすることは、のちに「自分で自由に学べるようになる」ための前準備なのだと、子どもたちに理解してほしいと思うのです。

保護者の方には「何かを教える人」ではなく、子どもたちの興味に合わせて学びをガイドする人としてお子さんと向き合っていただければ、とても有意義な学びの時間となるのではないかと思っています。その時間は「与えられたことを受け身で学ぶ」のではなく、自律的で主体的な本当の意味でこれからの時代に求められる学びのスタイルになるかと思うのです。

「学ぶ」をアップデートしよう

この「自律的で主体的な学び」というテーマは、単なる教育標語にとどまる話ではなく日々の行動や実際的な学習スタイル、最終的には働き方にまで大きく影響のあるとても大切なテーマだと私は思っています。

「何を学び、何を身につけたか」以上に「どのように学び、学ぶこと自体を楽しめているか」が、本当に本当に必要で求められる時代になっていきます。ご家庭で子どもたちの学びと向き合う保護者のみなさま、ぜひこういった視点で子どもたちの学びのサポートをしてあげて頂きたいと思っております。

自律的で主体的な学びのスタイルを確立することは、子どもたちの生涯にわたってよい影響を与えてくれる大切な成長だと私は信じています。もちろんいわゆる教科学習をおろそかにするという意味ではありませんが、自律的な学びの楽しさを知っているお子さんとそうではないお子さんでは、そもそも学ぶという行為の理解度が全く異なります。

以上、子どもたちの学びについて私なりに思うところを書かせて頂きました。今回は記事のテーマ上、私の専門である「学び方に個性のある子ども」たちのことは書けていませんが、今回書いたことはすべてのお子さんにあてはまる部分が大きいのではないかと思っております。

的外れな記事になっているかもしれませんが、何か少しでもお役に立てれば幸いです。

では、今回はこのへんで。

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